悲劇の首相 2007 9 24
「官邸崩壊」 上杉 隆 新潮社
この本を読んで感じるのは、
悲劇の政治家・安倍晋太郎を連想してしまうことです。
どうして、親子二代、悲劇がつきまとうのか。
「一将功成りて万骨枯る」
そういう小泉政治を見ていたから、
安倍氏は、心優しい政治家になろうとしたのか。
しかし、政治とは、権力闘争の場でもあります。
「兵」が死なない戦場など、あり得ないのです。
安倍氏が集めた兵は、
将を守ろうとして自らの命を投げ出すことなく、
つまり、誰も泥をかぶることなく、
手柄を立てることに夢中となっていたかもしれない。
将である安倍氏も、「泣いて馬謖を斬る」ことができなかった。
これは、育ちがよいことが災いとなっているかもしれません。
もちろん、どんな政権でも、
ベストな人材を揃えることはできないでしょう。
しかし、人事の要はあったと思います。
首相を生かすも殺すも、首相秘書官と官房副長官(事務)の腕次第。
こういうことが、わかっていたでしょうか。
それを官房長官だと思っていたかもしれません。
しかし、官房長官は、政治家であり、
場合によっては、将来の首相候補でもあります。
フットワークを期待するのも、泥をかぶるのを期待するのも
場合によっては難しいケースがあるのです。
もうひとつ、安倍氏には気になる点があります。
なぜ、安倍氏は苦労人が好きなのか。
苦労人だからこそ、期待できない場合があることを知っていますか。
苦労人は、苦労しすぎて、
いつまでも苦労を背負いすぎる欠点があるのです。
あるいは、いつまでも苦労を抱きかかえているのです。
こうなってしまうと、苦労人は、過去に生きる人となるのです。
深層心理では、苦労人は、いつも苦労を求めてしまうのです。
さて、政界にも親友は必要でしょう。
安倍氏には、親友(戦友)がいるのでしょうか?
「江東の子弟才俊多し、捲土重来未だ知るべからず」
杜牧 「題烏江亭」 (三省堂 中国名言便覧)
親友とは close friend 2004 5 2
親友とは、間違っている時は、
間違っていると言うのが、親友です。
いつも、ゴマをすっている人間は、親友とは言いません。
そんな人間は、いざという時に、役に立ちません。
指導者が、誤った時に、
そういう人間は、指導者と一緒になって、オロオロするだけです。
むしろ、いつも反対意見を言う人の方が、役立ちます。
自分とは違った視点で、物事を見ていますので、
困った時には、案外、役に立つのです。
ですから、そういう人間も、身近においておくべきです。
日頃から、うるさく言う人間は、
時には、敵にも見えるでしょう。
しかし、イエスは、敵を愛しなさいと教えたはずです。
身の回りが、すべて、
ゴマをする人間ばかりとなった時には、
「裸の王様」になっています。
育ちがいいと
育ちがいいと、
近寄ってくる人がみんな、いい人に見えてしまうのです。
しかし、近寄ってくる人には、やはり、いい人・悪い人がいるのです。
なかには、「うまく利用してやろう」と考えている、そういう人もいるのです。
ですから、政治家として、あるいは経営者として、
付き合っていい人、付き合って悪い人と、うまく仕分けしていく必要があるのです。
こうしたことは、庶民ならば、成長過程で、
自然と、生活の知恵として身に付けていくものですが、
育ちがいいと、つまり温室育ちですと、
こういう免疫機能が身に付いていないのです。
自分には、こういう弱点があるのだなという自覚を持って生きていけば、
「後天的に」、こういう免疫機能が身に付いてくると思います。